金属

蝋型

仏具金物は、現在では一人の職人が鋳造から製品まで仕上げるのではなく、完全に分業化され、鋳造、仕上げ、彫金、ロクロ、磨き、メッキ、色付けなど細かく分かれています。特に鋳造方法は古来よりある惣型鋳造、込型鋳造と比較的新しい生型鋳造、最も新しいCO2鋳造の五種類です。蝋型鋳造は、蜜蜂の蝋と松脂とを混ぜ合わせたものを用い、自由に細工ができ、精密な鋳造ができるので、現代でも細工物に使われています。惣型鋳造法は、わが国最古の鋳造法で、いまは梵鐘や鍮のような鳴り物に使われています。込型鋳造法は惣型鋳造法に属し、梵鐘や鍮のような簡単な型に対し、複雑な細工物を作るときに用いられ、一般に押物鋳と言われています。生型鋳造法は、土と川砂に粘土を交えて鋳型をつくり、先の三つの方法は型を焼くのに対し、焼かずにそのまま鋳造するので生型と言われ、おそらく、2~300年前に西洋より伝来された方法で、現代寺院用、在家用仏具に多く用いられている。最も現代に生まれたCO2鋳造法は、昭和20年代にわが国に伝来し、特に大型鋳物に適した方法で、大型仏像や外置香炉などに多く用いられています。 すべての鋳物は、製品になるまでに先に述べたように、様々な作業が必要で、丸いものはロクロにかけ、バイトというもので滑らかに挽かれます。ロクロにかけられない角ばった物や細工物は、鈩、キサゲなどで一つひとつ手作業で表面を仕上げていきます。その後、彫の必要なものは彫を施して、一応生地ができあがります。その後、古来よりある鍍金や現代の電気メッキにかけるもの、表面を光らすバフ磨きや、煮色、青銅色、オハグロ色、漆焼付など色付けをして製品になります。その他にも、扉の金具や装飾品を鉄で作ったり、真鍮板や銅板を使って様々な仏具製品を作っております。

鎚起

一枚の地金を終始、人力によって根気よく打ち伸ばして「けいす」などを造る技法を「鎚起」といいます。「けいす」が打ちあがるまでには、厚い黄銅板を打ち伸ばしては焼き戻し、焼き戻し手は打ち伸ばすという工程(焼鈍・なまし)を30回以上、繰り返します。 打ち伸ばし作業は、板の伸び具合を見極め、どの部分をどのぐらいの力で打てばよいのか、瞬時に判断し、丁寧に伸ばしていきます。そのため、ひと打ちひと打ちに、高い集中力が必要です。荒打ちの伸ばしを習得するのに10年から15年の歳月を要し、その音色を感得するにはさらに長い年月を要します。しかも、激しい肉体労働であるため、後継者が少なく、数人の職人だけになってしまいました。 蝋付けや鋳物製の「けいす」がほとんどになってしまった今、形の美しさだけではなく、音色が命の「けいす」の製造法としては、京仏具ならではの「鎚起」の技法に優るものはありません。