塗と蝋色

漆塗の工程

①素地固め②刻芋彫③刻芋填い④刻芋削り⑤刻芋研ぎ⑥木地固め⑦布巻き紙着せ⑧布目揃え⑨荒錆しごき⑩空石⑪荒錆付け
⑫地研ぎ⑬地固め⑭錆付⑮空研ぎ⑯錆付け⑰化粧錆⑱錆研ぎ⑲研磨⑳下塗㉑下塗研ぎ㉒中塗り㉓中塗り研ぎ㉔上塗り
と多くの工程を経て完成致します。
上記は通常『たて塗』と呼ばれておりますが、さらにもうひと加工加えた『蝋色』と申します仕上加工がございます。
漆塗は艶のある漆で塗るのですが、『蝋色』仕様の場合は艶のない漆で塗り上げたあと、駿河炭と申します細かな粒子の炭で塗面を研ぎ上げ
表面を鏡の様に仕上げる技法でございます。その工程は①荒砥ぎ②仕上げ研ぎ③胴ずり④摺漆⑤摺覆⑥磨き⑦摺漆⑧磨き⑨摺漆⑩仕上げ磨き⑪角さし
と多くの工程を経て完成致します。

さて、AからD(右から)は一見同じ黒塗りの板に見えますが、実は工法の違う4種類の塗板でございます。
Aは素地に『サフェーサー』と申します合成塗料を下地に使用し、『カシュー塗』と呼ばれている合成塗料で塗られております。
BはA同様の『サフェーサー』と申します合成塗料の下地に本漆を手塗で塗った板でございます。
CはBと同様の本漆塗でございますが、砥粉や膠で調合した『半田地』と申します下地を使用した漆塗の板でございます。
Dは砥の粉や生漆で調合した『堅地』と申します下地を使用した漆塗りの板に『蝋色』と申します工程を加えた板でございます。

画像では判別し難いのですが、この板に光を当ててみると・・・
Dの『蝋色』で仕上げた塗板は光の線がほぼまっすぐに映り込みます。これは表面が平らに整っているからでございます。
通常の『たて塗』は刷毛塗のため表面を平らに整えることは困難でBやCのようになります。

京製品はこの『たて塗』と『蝋色』を部品の面積や箇所によって使い分けて仕上げるのが一般的でございます。
※画像で見るよりも実際に現品をご覧頂ければその違いは明らかにお判りいただけます。
是非とも組合店舗へご来店頂きご高覧下さい。